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研究

概日時計とは?

 多くの生物は、地球の自転に伴う環境サイクル(昼夜の変化)に適応するため、約24時間周期の生物リズム(概日リズム、サーカディアンリズム)を発生させる仕組み(概日時計)を持つ。概日リズムは,外界の温度,光などの環境条件を一定にした連続条件下に移しても約24時間周期で持続する内因性の生物リズムである。また,光や温度などの外環境周期に同調することができる(位相同調性)。さらにその自由継続周期は温度に影響されない(温度補償性)。これらの3条件を満たすことで,概日リズムは地球の自転に伴う環境サイクルへの適応体制として機能していると考えられている。

 概日時計は安定な約24時間周期の振動を生み出すための装置であり、振動体(oscillator)とも呼ばれる。振動体の時刻は環境センサー(光受容体,温度受容機構)からの情報伝達系(入力系、input)を介し、外界の環境変化に応じて,(ちょうど我々が時計の時刻を調整するように)時刻の調整を受ける。また,概日時計によって生じるリズム情報は,出力系(output)と呼ばれる出力経路を介して実際の細胞/個体レベルの生理活性リズムとして実現される。現在,バクテリア,菌類,昆虫類,高等動植物を用いて,世界中で概日時計システムの分子機構の解析が精力的に行われ,急速にその解明が進められつつある。

温度補償性とは

 一般に生命活動は温度に大きく影響される(バクテリアの増殖速度など)。これは生化学反応の速度が温度に影響されるためであり、一般に温度が10℃上がるとその反応速度は2から3倍になる。一方で概日時計は温度で周期が変化しない特別な仕組みを備えており、これにより季節や昼夜の温度変化の中でも狂わない一定の速度でリズムを刻む事ができる。